親族相続

医師自身の離婚・医師との離婚

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医師自身の離婚・医師との離婚

Q.私は、東京23区内にある医療法人Xの社員・理事をしています。医療法人Xは私の夫であるAが平成10年に設立したもので、現在も夫が理事長・院長を務めています。医療法人Xの設立に当たってはAが9000万円を、私が1000万円を出資しており、その他に出資者はいません。私も設立当初から医療法人Xの経理担当の事務・常務理事として働いていました。
5年ほど前に、Aが医療法人Xの女性看護師と不倫関係にあることが判明し、私とAはその頃から別居状態です。この状態で私が離婚を考えた場合、何をすればよいのでしょうか。また、そのような場合、どのようなことが起きるのでしょうか。

医師自身の離婚・医師との離婚の特徴な点

医師の離婚が認められるかどうか、という点については普通の離婚と同じように考えられますので要件が特に変わるということはありません。医師側、医師の配偶者のいずれの側も、相手方の同意が得られない場合に離婚をするためには以下の要件を満たす必要があります。
民法第770条(離婚原因)
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

医師の離婚で特徴的な点としては、(1)医師の収入が他の職種に比べると比較的多いこともあり財産分与や慰謝料の金額が高額になることがあることです。この点は、他の高収入の職種の場合と同じですのでそう難しい点はありません。
問題は次の点です。(2)医療法人が設立されている場合、医師の配偶者が医療法人の出資社員・理事等であることが多いため、離婚を選ぶと離婚の後の医療法人の社員・理事の地位をどうするか、退社する場合に出資持分払戻をどうするか、など医療法人上の問題が必然的に生じてくることです。

離婚についてはどのような流れで進むのですか?

離婚については、まずは裁判外で話をすることになります。離婚の合意ができて、どのような財産をどのように分けるのか慰謝料はどうするのかということについてお互いが納得すればその時点で離婚することができます。
ただし、一方が離婚に反対している、あるいは条件がまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。なお、離婚についてはまずは裁判所で調停をしなければ、裁判にすることはできないとされています。
離婚調停(裁判所で行われる話し合いになります)が決裂した時には審判・裁判になります。離婚審判・裁判の場合には、裁判所が離婚の成否を判断します。

どのようなことが起こりうるのですか?

たとえば、離婚の調停を申し立てた場合に、理事長であるAが招集する社員総会での決議次第ではあなたの社員・理事の地位に変更があるかもしれません。
また、あなた自身が医療法人Xから離れたいということであれば社員から退社するという選択肢をとることも可能です。社員から退社した場合には、医療法人の定款に「退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる」というような条項があるならば、医療法人Xに対する出資持分の払い戻しを検討することになります。出資総額が1億円で、そのうちあなたが1000万円を出資したのだとすると、原則としては現在の医療法人Xの純資産額の10パーセントの払い戻しを求めることができます。詳しくはこちらのページをご覧ください。
出資持分の払い戻しについてはかなり専門性が高い分野ですので、事前に弁護士に相談した方がよいと思われます。

離婚を切り出したことが原因で事務員を解雇されることはあるのでしょうか?

あなたとA氏との間の個人的な話である離婚と、医療法人Xにおけるあなたの地位は別に考える必要があります。解雇が認められるためには解雇に値するだけの理由が必要とされていますので、離婚のみを理由として医療法人が理事長の妻を解雇することはできません。
しかし、医療法人Xの理事長であるAが、何らかの理由をつけてあなたに対して「事務員を解雇をした。今後、給与は支払わない」というような行動を取ってくることはあり得ます。

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