## カルテ開示請求対応ガイド 事例集(1)
### 事例集のはじめに
[[カルテ開示請求対応ガイド はじめに|本編]]では、カルテ開示請求の法的根拠から実務上の注意点まで、対応の基本的な考え方を全8回にわたってご紹介しました。この事例集では、具体的な場面を想定しながら、本編で述べた考え方をどのように実践に活かすかを見ていきたいと思います。
第1回は、基本的なケースである「患者さん本人からの請求」を取り上げます。
以下は、対応を考えるための架空の例です。
### 医療事故を疑う患者さんからの請求
患者Aさんから、「以前の手術で医療ミスがあったのではないか」としてカルテの開示を求められた、というケースです。
このような場合であっても、[[カルテ開示請求対応ガイド (2)|(2)]]で述べたとおり、開示請求の理由を問い質す必要はありません。患者さん本人からの請求である以上、理由がどのようなものであっても、原則として開示に応じる義務があります。
請求には、遅滞なく対応することが基本です。
開示とあわせて必要な説明を行うことは、患者さんが診療の経過を理解する助けになります。
ただし、それによって紛争を避けられるとは限りません。
### 説明不足を主張される場合
患者Bさんから、「手術のリスクについて十分な説明を受けていなかった。確認のためにカルテを見せてほしい」と請求があった場合です。
説明が不足していたと主張されていること自体は、不開示の理由になりません。
法定の不開示事由に当たらない限り、遅滞なく開示に応じることになります。
こうしたケースでは、同意書やカルテに「いつ、どのように説明したか」がどの程度具体的に記録されているかがポイントになります。「患者さんにリスクを説明した」とだけ書かれているのと、「○月○日に面談室で本人・家族同席のもと、合併症の可能性について口頭で説明し、同意書に署名をいただいた」と記録されているのとでは、後日の評価に影響することがあります。開示請求を、今後の記録の残し方を見直す契機と捉えることもできるでしょう。
既存の記録を、当時から記載されていたように書き換えてはいけません。
訂正・追記が必要な場合は、元の記録を残し、実施日時・記載者・理由が分かる形にします。
### セカンドオピニオン・転院のための請求
患者Cさんから、「他の病院でセカンドオピニオンを受けたいので、検査データやカルテを開示してほしい」という依頼です。
セカンドオピニオンや転院のためという請求の目的自体は、不開示の理由になりません。
[[カルテ開示請求対応ガイド (1)|(1)]]で述べた例外事由を確認し、原則として開示に応じます。
第三者の情報が含まれる場合など、具体的な対応は記録の内容によって異なります。
診療情報提供書(紹介状)の作成や、検査データ・画像データの提供が役立つ場合があります。
ただし、紹介状の提供だけで、求められたカルテの開示に代えることはできません。
[個人情報保護法](https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)33条に従い、原則として本人が請求した方法で開示します。
その方法による開示が困難な場合は、書面の交付で対応し、本人に遅滞なく通知します。
患者さんの利便性を考え、無用な手続きを増やさない姿勢が、信頼関係の維持にもつながります。
次回公開予定の「事例集(2)」では、家族や未成年者、遺族からの請求に関する事例を取り上げます。
#### カルテ開示請求対応ガイド 事例集 目次
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(公開日:2026年10月28日 文責:弁護士鈴木沙良夢)