## カルテ開示請求対応ガイド (2) ###  開示請求が来たときの初動 [[カルテ開示請求対応ガイド (1)|前回]]は、カルテ開示請求とは何か、開示対象となる「カルテ」の範囲、そしてカルテ開示を支える法的な枠組みについてお話ししました。今回は、実際にカルテ開示請求が来た場合に、医療機関としてどのような手順で対応すればよいのかを見ていきたいと思います。 カルテ開示請求は、患者さんが窓口に来て「カルテを見せてほしい」とおっしゃる場合もあれば、弁護士から書面で届く場合、保険会社から電話で連絡が入る場合など、さまざまな形でやって来ます。いずれの場合でも、大切なのは場当たり的に対応しないことです。 担当者によって対応が異なったり、確認すべきことを飛ばしてしまったりすると、後からトラブルになりかねません。「開示請求が来たらこの手順で進める」という基本的な流れを院内であらかじめ決めておくことが、適切な対応の第一歩となります。 まず初動として重要なのは、対応窓口を明確にしておくことです。多くの医療機関では、医事課や総務課などが窓口となることが多いですが、規模や体制に応じて最適な部署・担当者を決めておくとよいでしょう。窓口が決まっていれば、受付のスタッフも「カルテ開示のご請求は○○課でお受けしております」と案内でき、対応がスムーズになります。 もう一つ、初動の段階で意識しておきたいのが、開示請求の条件として理由説明を求めないという点です。[個人情報保護法](https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)上、開示請求に理由の記載は求められていません。対象となる診療記録を特定するために必要な範囲で確認することはあり得ますが、理由がどのようなものであっても、患者さん本人からの請求であれば原則として開示に応じる義務があることに変わりはありません。窓口で「何のためにカルテが必要なのですか」と理由を問い質し、理由次第で対応を変えるような扱いは適切ではありません。この点については、第4回(公開予定)でもあらためて触れます。 ###  請求者の確認と本人確認 開示請求を受け付けたら、次に行うべきは請求者の確認です。具体的には、「請求しているのは誰か」「その人に開示してよいか」という点を確認します。 患者さん本人からの請求であれば、運転免許証やマイナンバーカードの表面などによる本人確認を行います。本人であることが確認できれば、前回お話しした「原則開示」の考え方に沿って、基本的には開示に応じることになります。 一方、患者さん本人以外の方からの請求である場合には、より慎重な確認が必要です。 厚生労働省の「[診療情報の提供等に関する指針](https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15m.html)」では、患者さん本人に代わって開示を求め得る者として、法定代理人(親権者や成年後見人)のほか、本人から代理権を与えられた親族やこれに準ずる者、患者さんの判断能力に疑義がある場合に現に世話をしている親族やこれに準ずる者などが挙げられています。それぞれの立場に応じて、法定代理人であれば資格を証明する書類(登記事項証明書等)を、代理権を与えられた親族であれば委任状などにより代理権を確認します。 確認方法は、本人に過重な負担を課さないよう配慮して定めます。 弁護士が「依頼者の代理人として」請求してきた場合には、委任状の有無に加えて、開示を求める範囲が委任の趣旨に含まれているかどうか、患者さん本人が実際にその範囲の開示に同意しているかどうかについても確認する必要があります。 なお、指針の列挙だけで、個人情報保護法上の代理人による請求の範囲が決まるわけではありません。請求の根拠と代理権の内容を確認します。 亡くなった患者さんのご遺族からの請求は、また少し異なります。個人情報保護法は「生存する個人」の情報を対象としていますので、亡くなった方のカルテに同法の開示義務が直接及ぶわけではありません。 もっとも、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は、患者さんが死亡した際には遅滞なく遺族へ診療情報を提供すべきものとし、遺族からの診療記録の開示請求にも原則として応じるべきとしています。同指針は、開示を求め得る遺族の範囲を、配偶者、子、父母及びこれに準ずる者としています。これらの方に法定代理人がいる場合は、その法定代理人も含まれます。 遺族からの請求については、故人との関係を証明する書類(戸籍謄本など)を確認のうえ、故人の生前の意思やプライバシーにも配慮しながら対応していくことになります。 このあたりの確認作業は煩雑に感じられるかもしれませんが、確認を怠って本来開示すべきでない相手に情報を渡してしまうと、プライバシー侵害として大きな問題になります。院内であらかじめ「請求者別の確認書類チェックリスト」のようなものを用意しておくと、担当者が迷いにくくなり効果的です。 次回(公開予定)は、開示の可否をどのように検討し、実際にどのような方法で開示を行うのかについてお話ししていきます。 ####  カルテ開示請求対応ガイド 目次 - [[カルテ開示請求対応ガイド はじめに|はじめに]] - [[カルテ開示請求対応ガイド (1)|(1)カルテ開示請求の基本]] (公開日:2026年10月6日 文責:弁護士鈴木沙良夢)