## 医療法人法入門 (2) ###  医療法人の組織は、医療法と定款で決まる [[医療法人法入門 (1)|前回]]の最後では、医療法人を運営・経営するためには法人を構成する組織が必要であることを説明いたしました。今回からは、医療法人の組織について詳しく説明します。 まず、医療法人の組織は何によって決められているのかを知る必要があります。 医療法人のルールを定めている法律は「医療法」です。この医療法には、医療法人の組織や構成員について基本的な規定が設けられています。 社団医療法人には、意思決定や業務執行のための機関として、社員総会や理事会などを置きます。 かつての医療法では理事が原則として3人以上必要であることや、理事の過半数で業務が決定されることが記載されているだけでしたが、平成27年(2015年)の医療法改正(平成28年9月施行)以降、医療法人は必ず理事会を設置することが法律上明確に規定されました。 医療法人の運営を考える際には、医療法の規定だけでなく、同法が準用する一般法人法の規定も確認することが大切です。 ###  医療法人の組織の詳細は定款によって異なる場合がある 医療法人の運営には、医療法に加え、同法が準用する一般法人法の規定や、各法人の定款が関わります。 理事会の運営も、すべてを定款で自由に決められるわけではありません。 法令の規律と、自法人の定款に定められた手続きを併せて確認する必要があります。 定款は行政の指導や認可に大きな影響を受けているものの、内容は医療法人ごとに異なってもよいことになっています。 ただ、現在は、厚生労働省が[モデル定款例](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135131.html)を作成しており、多くの都道府県では医療法人設立時にこのモデルに準拠した定款あるいは各都道府県が作成した定款例による定款作成を求めています。 そのため、最近設立された医療法人の定款は比較的似通った内容になっていることが多い印象です。 しかしながら、定款例には都道府県ごとに若干の差異が存在しており、決して一律ではありません。 また、昭和期に設立された古い医療法人では、時代の変化や法改正に応じて定款を部分的に修正・追加してきたため、現在のモデル定款とは大きく異なる独自の内容を持っている場合もあります。 その結果、定款の違いによって組織や運営方法にも差異が生じます。 例えば、社員の除名を検討する場合は、除名事由に加え、決議に必要な出席数や賛成数を確認します。 手続きが定款に沿っているか、その定めや適用が法令に反しないかを検討する必要があります。 他の法人と同じ手続きでよいとは限りません。 ###  医療法人の主な構成員と組織 医療法と定款により、医療法人の組織・構成員は以下のように定められています。 1. 社員(これは従業員のことではありません) 2. 社員総会 3. 理事 4. 理事会 5. 理事長 6. 監事 (ここでは社団医療法人を扱います。財団医療法人の機関構成は異なります。) 社員総会は、法律と定款で定められた事項について決議する機関です。 社員総会が選任した理事で構成する理事会は、法人の業務執行を決定し、理事の職務執行を監督します。 社員総会の決議であれば、理事会等の権限を無制限に代替できるわけではありません。 原則として、理事会が理事長を選出し、理事長が法人を代表します。 都道府県知事の認可を受けて理事を1人だけ置く医療法人では、その理事を理事長とみなす特則があります。 ###  社員と社員総会の重要性 一般的には理事長が医療法人の中心的存在のように思われがちですが、実は医療法人の根幹をなす基本的な構成員と組織は社員と社員総会です。社員総会は、法令に定められた手続きに従い、理事・監事の選任や解任、定款変更、解散などの重要事項を決議します。 監事の解任には通常より重い決議要件があります。 定款変更や解散には、決議のほかに都道府県知事の認可が必要となる場合があります。 つまり、医療法人の運営方針や将来を左右する根本的な力は社員と社員総会に帰属しているのです。 [[医療法人法入門 (3)|次回]]は、この医療法人の根幹をなす社員と社員総会について詳しく解説していきます。 (公開日:2025年4月3日 文責:弁護士鈴木沙良夢)