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医療法人議事録の書き方入門1

目次

弁護士鈴木沙良夢による医療法人議事録の書き方入門(1)

医療法人の議事録を作る立場になった方へ

今回から医療法人の議事録を作成する立場になった方へ向けて、弁護士の立場から「どのようにして議事録を書けばよいのか?」というテーマで記事を書いていきたいと思っております。
このページをご覧になっている方には色々な方がいらっしゃると思われます。理事長先生や、事務長、あるいは医療法人の顧問税理士の場合もあることでしょう。この記事では、医療法人の議事録の作成について全く知識や経験がない状態の方を想定して、なるべくわかりやすく一つ一つ噛み砕いて説明をしていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

議事録の作成が必要な理由

医療法人において社員総会や理事会といった会議を開いた場合、通常は議事録を作成します。しかしながら、全ての医療法人で議事録が必ず、正しく作成されているとはいえないのが実情です(なお、平成27年9月に成立した改正医療法により社員総会議事録・理事会議事録の作成は義務となります)。
たとえば、登記をする際や税務上の理由で社員総会議事録・理事会議事録が必要な場合に、そのときだけ司法書士、税理士・会計士、事務方等に作ってもらい、特に他の社員総会・理事会については議事録を作成していないというようなこともよく見受けられます(中には実際には社員総会・理事会は開いておらず、社員・理事が議事録の内容をよく確認しないまま印鑑だけを持ち回りで押しているというような状況の医療法人も相当数あります。これはこれで更に大きな問題です)。

しかし、医療法人の議事録の作成をおろそかにすると非常に大きな問題が起きることがあります。
以下に具体例を挙げて説明をしましょう。

例えば、ある理事長先生が自分の息子を医療法人の社員(従業員のことではありません)に迎え入れようとしたとします。その医療法人では社員になるには社員総会で総社員の過半数が出席して、出席した社員の過半数の決議で可決される必要がある、とされていたとします。
実際に、社員総会は開かれて満場一致で理事長の息子を入社させるという議案は可決されました。
しかし、「満場一致だったのだし別に問題は起きないだろう」ということで議事録は特に作っていなかった、とします。
それから数年後、理事長の息子に社員の資格があるか否かが問題となりました。医療法人の社員間が二分して揉めて、どちら側が社員総会の過半数を握るのか、というようなことが問題になった際には、ある人が入社しているのか(社員の資格を持っているのか)否かというのは大きな争点になりえます。
しかし、ここで議事録が作られていないと理事長の息子が社員であるかどうか証明のしようがない、という事態に陥ってしまうのです。議事録という紙一枚があるかどうかで有利不利が変わってくることもあります。
このように医療法人において「議事録を作らない」ということはそれ自体がとてつもなく大きなリスクなのです。

今まさに議事録を作らなければならない方のための議事録作成入門

私(鈴木)の事務所で扱っている案件でも「議事録がない」あるいは「議事録の記載に問題がある」という理由が争いの深刻化を招いているケースがかなりの割合を占めています。
このような私自身の経験からも、医療法人においては是非とも適切な議事録を作成しておくことが必要だと考えております。

この記事では「今まさに議事録を作らなければならない!」という状況にある方のために丁寧な説明を心がけたいと考えており、法律的に難しく説明をするつもりはありません。
それでは今後ともおつきあい下さいますようお願い申し上げます。

次回は、医療法人の社員総会議事録において議案の前に書かなければならない【表題】 【日時】 【場所】 の書き方について説明いたします。
(平成28年1月12日 文責:弁護士鈴木沙良夢)

なお、本文の内容は作成された当時における法律や規則に基づいております。その後の法改正などにより現時点では的確ではない内容となっている場合があることをご了承ください。

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