医療法人

医療法人法入門5

弁護士による医療法人法入門(5)

医療法人の監事について

今回は、医療法人の監事とは何かということについて説明したいと思います。

医療法人には理事の他に監事という役員がいます。
監事がどのような業務をするのかということについてですが、医療法人の業務や財産状況を監査することが主な役割です。監事が監査を行う中で、業務や経理などに不正を発見した場合には社員総会に報告をしなければなりません。
また、報告のために監事自らが社員総会を招集することもできます。これは社員総会を招集する権限を持っている理事長自身が不正を行っており、社員総会の招集をしないような場合を想定して、監事自身が招集できることとしたものです。

医療法人には必ず監事を1人以上おかなければなりません(医療法第46条の2)。任期は理事と同じく2年ですが再任が可能です。
再任を繰り返して同じ人が監事を続けている医療法人が、特に中小規模の法人を中心に多く見受けられます。
監事の選び方については医療法には記載されていませんので、定款でどのように決められているかによります。通常は、「監事は社員総会で選任する」ことにされている医療法人がほとんどでしょう。

監事は、理事及び法人の職員を兼ねていてはいけないと法律で定められています(医療法第48条)。また、役員・親族等と特殊な関係にある者については、法律で明確に禁止されているわけではないのですが、監事になるのは望ましくないとされております(医療法人運営管理指導要綱)。
医療法人の理事や職員の立場にありながら、業務や財産状況を正確に監査して不正を報告することはできないという判断に基づく制限といえるでしょう。

実際によく見受けられるのは医療法人の顧問税理士が監事を兼ねているという場合です。
会計を担当している税理士であれば財産状況はよく把握できているという考え方のようですが望ましくはありません。顧問税理士の監事就任を認めないという指導をしている都道府県もあるようです。

監事の責任について

監事が職務を怠って医療法人に損害を与えた場合には、損害を賠償する責任を負います。たとえば、理事長が法人の財産を横領をしていたことを知っていたのに見て見ぬふりをして社員総会に報告しなかった、というような場合はこれに当たります。
このような場合、監事は無給・有給に関わりなく損害賠償の責任を負います。また、名義を貸しているだけの名ばかりの監事であっても責任を負います。
そのため、名目上の監事であっても医療法人から思わぬ多額の賠償責任を負うこともあります。

株式会社の監査役などとは異なり、医療法人の監査役の場合、医療法人以外の第三者に対して直接の損害賠償責任を負うことがあることを定めた特別の法律の定めはありません(一般的な民法によって損害賠償責任を負うことはあり得ます)。裁判例をざっと調べてみましたがそのような責任を認めた事例は見当たりませんでした。
ただし、昨今の医療法人の規模の大きさ等に鑑みますと、いずれは医療法人の監事についても前述の株式会社のような法律の定めが作られるのではないかと考えています。
次回からは理事について説明をしていきます。
(平成26年4月1日 文責:弁護士鈴木沙良夢)

なお、本文の内容は作成された当時における法律や規則に基づいております。その後の法改正などにより現時点では的確ではない内容となっている場合があることをご了承ください。

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