## カルテ開示請求対応ガイド ###  カルテ開示請求と医療機関 カルテ開示請求は、以前は一部の大病院が時折対応するもの、という印象だったかもしれません。しかし、近年では規模や診療科を問わず、個人のクリニックから大規模病院まで、あらゆる医療機関がカルテの開示を求められる場面が増えてきています。 患者さん本人から「自分のカルテを見せてほしい」と言われることもあれば、亡くなった患者さんのご遺族からの請求、あるいは弁護士や保険会社のような第三者からの請求など、その形も様々です。特に最近はインターネットで「カルテ開示請求」について簡単に調べることができるようになったこともあり、患者さんの側から開示を求めるケースは今後も増えていくものと思われます。 ###  カルテ開示は「本人へは原則開示」 現在の法律上、患者さん**本人**からカルテの開示を求められた場合には、医療機関は原則としてこれに応じる義務があります。その根拠となるのが**個人情報保護法**です。民間の医療機関は個人情報取扱事業者に該当しますので、患者さん本人から保有個人データの開示請求があった場合には、原則として開示しなければならないことになっています。 また、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」や日本医師会の「診療情報の提供に関する指針」においても、診療記録の開示が求められています。もちろん、例外的に開示を断ることができる場合もありますが、基本的な姿勢としては「原則開示」であるということを押さえておく必要があります。 ###  対応を誤ることのリスク カルテ開示請求への対応を誤ると、思わぬトラブルに発展することがあります。例えば、正当な理由なく開示を拒否した場合には、患者さんの不信感を招くだけでなく、不法行為として損害賠償を命じられた裁判例もあります。また、対応が遅れることで「何か隠しているのではないか」「カルテを改ざんしているのではないか」という疑いを持たれてしまうおそれもあります。 一方で、本来開示すべきでない第三者に個人情報を誤って開示してしまえば、プライバシー侵害として別の問題が生じます。このように、カルテ開示請求は「拒否してもリスク、対応を誤ってもリスク」という構造を持っているのです。 ![[carte-disclosure-risks.svg]] ###  基本を押さえることの大切さ もっとも、カルテ開示請求への対応は、基本的な考え方を押さえておけば、多くの場面で適切に判断することができます。すべてを完璧に整備することは難しくても、「本人からの請求には原則として開示に応じること」「例外的に拒否できる場合を理解すること」「本人以外からの請求は要検討」「院内での対応手順を決めておくこと」、この四つを意識するだけでもリスクは大きく減ります。 この「カルテ開示請求対応ガイド」では、カルテ開示請求の法的根拠から、実際に請求が来た場合の対応フロー、様々なケースごとの対応のポイント、そして開示後に起こりうるトラブルへの備えまでを、順を追ってご紹介していきます。 院長先生や事務長をはじめ、医療機関でカルテ開示に関わる可能性のある方々にぜひお読みいただければ幸いです。 ####  カルテ開示請求対応ガイド 目次 1. [[カルテ開示請求対応ガイド (1)]] 2. [[カルテ開示請求対応ガイド (2)]] 3. [[カルテ開示請求対応ガイド (3)]] (公開日:2026年3月11日 文責:弁護士鈴木沙良夢)