## 医療法人法入門 ~ざっくり学ぶ医療法人~ ###  医療法人と医師の関わり 医療法人は、勤務医や管理者でない立場の先生方にとってはあまり身近に感じられないかもしれません(医療法人の管理医師は原則として理事に就任する必要があります)。しかし、開業を検討したり、管理医師になったり、あるいは家族が代々運営してきた医療機関を引き継いだりする場面では、急に重要な存在となります。 開業して経営が安定してくると「そろそろ医療法人化を検討しよう」と考え始める方も多いですし、長い歴史を持つ医療法人を先代から継承して理事長に就任するケースもあるでしょう。 ###  「医療法人になる」ということ 「税金対策になる」「信用がつく」などの理由で医療法人化を検討されるケースは依然として多いですが、医療法人になると個人病院・診療所とはまったく違う法人格を持つ組織になります。法律的な性質も大きく変わるため、十分な理解が必要です。 特に最近は医療法改正なども進み、医療法人に求められるガバナンスや透明性が、以前より強く意識されるようになりました。 このことは言い換えれば、法律上「理事・理事長・社員が行わなければならないとされていること」が増えてきているということになります。 ###  医療法人についての理解なしに医療法人運営をすることのリスク 例えば、代々の家族経営であっても、いざ問題が生じると、それまで形式的だった医療法人特有の法的枠組みが急に現実のものとなり、「うちは家族経営だから社員総会なんかやってこなかった」というような慣例よりも、法律や定款の規定が優先されます。医療法では「社団たる医療法人の理事長は、少なくとも毎年一回、定時社員総会を開かなければならない」(医療法46条の3の2第2項)と定められ、定款には「年二回開催しなければならない」とする規定があることがほとんどです。 社員や役員間の意見の相違が法的紛争へと発展することもありますが、そのような場合には「今まで社員総会など一度も開いたことがない」というような従来の運営方法や慣行は、少なくとも裁判所には通用しないことが多いでしょう。 ![[medical-corporation-risks.svg]] ###  「医療法人ってどんなもの?」をざっくり理解することの大切さ 医療法人になることの意味や、すでに医療法人として運営している場合の法的側面は、理事長や理事だけでなく、社員(※従業員とは異なります。この点も後ほど詳しくご説明します)にとっても重要なポイントです。医療法人に関する法律を網羅的に把握する必要はないかもしれませんが、基本的な仕組みをざっくりと理解しておくことは、トラブルを未然に防ぎ、円滑な医療法人運営のためにとても大切です。 この「医療法人法入門」では、医療法人制度の基本的な考え方をはじめ、社員・理事・監事の役割、社員総会や理事会の運営方法などを、わかりやすく順を追ってご紹介します。 現在すでに医療法人を運営されている方はもちろん、「そろそろ法人化しようか」と検討中の方にも役立つ内容ですので、ぜひご一読いただき、医療法人の法的側面に関する理解を深めていただければ幸いです。 ####  医療法人法入門 目次 1. [[医療法人法入門 (1)]] (公開日:2025年4月1日 文責:弁護士鈴木沙良夢)