## 医療法人法入門 (6)
### 社員総会の議事と議決について
[[医療法人法入門 (5)|前回]]は、社員総会の招集手続きについてお話をしました。
今回は、社員総会が実際に開かれた後の議事の進め方や議決の方法、そして議事録の作成について解説します。
招集手続きが正しく行われ、社員が集まったら、いよいよ社員総会の本番です。しかし、ここでも守るべきルールがいくつかあります。議事の進め方や議決の方法を誤ると、せっかくの決議が後で争われることにもなりかねません。
### 議長の選任
社員総会を進行するには、議長が必要です。
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医療法第46条の3の5第1項
社員総会の議長は、社員総会において選任する。
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議長は社員総会の場で選ばれます。現行の[厚労省社団医療法人定款例](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135131.html)(最終改正平成30年3月30日)でも、議長は社員の中から社員総会で選任する建付けとなっています。もっとも、旧い定款や独自の条項を置く法人では、「理事長がこれに当たる」といった別の定めがあることもありますので、自法人の定款を確認しておくことが大切です。
議長には、社員総会の秩序を維持し議事を整理する権限が与えられています(同条第2項)。また、秩序を乱す者を退場させることもできるとされています(同条第3項)。実務上、ここまでの事態になることは稀かと思いますが、法律上はそのような権限が認められています。
### 定足数について
社員総会を有効に開催するためには、一定の人数が出席している必要があります。これを**定足数**と言います。
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医療法第46条の3の3第2項
社員総会は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の過半数の出席がなければ、その議事を開き、決議をすることができない。
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つまり、原則として総社員の過半数が出席しなければ、社員総会を開くこと自体ができません。例えば社員が5人の医療法人であれば、3人以上が出席していなければなりません。過半数ですので半分を超えている必要があります。つまり社員が4人の医療法人の場合、2人が出席していても社員総会を開くことはできません。
この定足数を満たさない状態で決議を行ったとしても、その決議は有効とはなりません。
なお、「定款に別段の定めがある場合を除き」とありますので、定款でこれと異なる定足数を定めることも制度上は可能ですが、実際にはモデル定款でも「総社員の過半数の出席」とされており、多くの医療法人がこの基準に従っています。
### 議決の方法
定足数を満たした上で、議事について採決を行います。
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医療法第46条の3の3第3項
社員総会の議事は、この法律又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
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原則として、出席者の過半数の賛成で議決が成立します。これがいわゆる**普通決議**です。
可否同数の場合には議長が決することになりますが、ここで注意すべき重要な規定があります。
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医療法第46条の3の3第4項
前項の場合において、議長は、社員として議決に加わることができない。
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議長は議決に加わることができないとされています。つまり、議長は最初の採決には社員としての一票を投じることはできず、可否同数になったときに初めて決定権を行使するという仕組みです。
この規定を見落として、議長が最初から社員として議決に参加してしまうと、手続き上の瑕疵となるおそれがありますので注意が必要です。
### 特別決議が必要な場合
普通決議よりも厳しい要件が課される場合もあります。
例えば、監事の解任については医療法で次のように定められています。
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医療法第46条の5の2第3項
社団たる医療法人は、出席者の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上の賛成がなければ、第一項の社員総会(監事を解任する場合に限る。)の決議をすることができない。
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つまり、監事を解任する場合には出席者の3分の2以上の賛成が必要とされています。また、定款の変更や法人の解散など、医療法人にとって極めて重要な事項についても、定款で加重された議決要件が定められていることがあります。どのような事項についてどの程度の賛成が必要なのかは、自法人の定款をよく確認しておくことが大切です。
### 書面による議決と代理人による議決
社員総会に出席できない社員についても、議決に参加する方法が設けられています。
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医療法第46条の3の3第5項
社員総会に出席しない社員は、書面で、又は代理人によつて議決をすることができる。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
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法律上は、出席できない社員は**書面による議決**(いわゆる書面表決)、又は**代理人による議決**が認められています。ただし、定款で別段の定めを置くことも可能です。
現行の[厚労省社団医療法人定款例(最終改正平成30年3月30日)](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135131.html)でも、書面又は代理人による議決権の行使を認めています。ただし、代理人は**社員でなければならない**とされている点に注意が必要です。
法人によっては定款で代理人による議決を認めていなかったり、代理人の範囲を限定していたりする場合がありますので、これについても自法人の定款を確認する必要があります。
### 特別の利害関係を有する社員
もう一つ知っておくべき規定があります。
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医療法第46条の3の3第6項
社員総会の決議について特別の利害関係を有する社員は、議決に加わることができない。
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例えば、ある社員の除名について決議する場合、その除名の対象となっている社員自身は、自分に直接関わる利害関係があるため、議決に加わることができません。この規定は公正な意思決定を確保するためのものです。
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### 理事・監事の説明義務
社員総会では、社員から質問が出ることもあります。これについて、医療法には次の規定があります。
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医療法第46条の3の4第1項
理事及び監事は、社員総会において、社員から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。
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理事や監事は、社員総会で社員から質問を受けた場合、原則としてこれに答えなければなりません。ただし、質問が社員総会の目的事項に関しない場合などは、この限りではないとされています。
この規定は、社員が議題について十分な情報を得た上で議決権を行使できるようにするためのものです。
### 議事録の作成
社員総会が終わったら、議事録を作成する必要があります。
医療法では、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」といいます。)第57条の規定を準用する形で、議事録の作成が義務付けられています(医療法第46条の3の6)。
議事録には、社員総会の日時・場所、議事の経過の要領及びその結果、出席した役員の氏名などを記載し、議長及び出席した社員のうちから選ばれた議事録署名人が記名押印(又は署名)するのが一般的です(具体的な記載事項は厚生労働省令で定められています)。
議事録は、社員総会が実際に開催されたことや、どのような議題について、どのような決議がなされたのかを証明する重要な書類です。後日、決議の効力が争われた場合には、議事録がその有効性を裏付ける証拠となります。
逆に言えば、実際には社員総会を開催していないにもかかわらず議事録だけを作成していた場合、その「決議」は法的に無効あるいは不存在とされるおそれがあります。[[医療法人法入門 (3)|(3)]]でも述べましたが、社員総会は実際に開催し、正確な議事録を残しておくことが大切です。
### まとめ
社員総会の議事と議決に関するルールは、公正な意思決定を確保し、後から決議の効力が争われることを防ぐためのものです。定足数の確認、議長の議決権の取扱い、書面表決の可否、議事録の作成など、一つ一つは難しいことではありませんが、確実に実行することが重要です。
次回は、社員の入社と退社(社員の地位の得喪)について解説します。
(公開日:2026年3月13日 文責:弁護士鈴木沙良夢)