目次
美容皮膚科でのクリニック専用化粧品の販売
Q.神奈川県横浜市で美容皮膚科の個人クリニックを開業しています。
今までもカウンセリングが不要な化粧品の販売はしてきましたが、この度、販売に先だって医師がクライアントさんのカウンセリングをする必要があるクリニック専用の化粧品(ドクターズコスメ)を院内で販売したいと考えています。このような場合に、行政から何らかの許可を取る必要があるのでしょうか?
また、販売元と契約をする際に気をつけなければならないことはあるのでしょうか?
医療機関が化粧品の販売をしてもよいのか?
医療機関での物販についての相談は、私(鈴木)の事務所でも比較的多く相談のある事案です。
まずは、そもそも医療機関であるクリニックで化粧品を販売してよいのかという点について説明いたします。結論から申し上げますと、美容皮膚科において化粧品を販売することは可能です。
医療機関が物品の販売ができるのか?ということについては様々な議論がありましたが、現時点(平成28年1月現在)においては「療養の向上を目的として行われるもの」(※1)であれば認められていると考えてよいでしょう。
美容のために通院されている患者さんが会計時に一緒に化粧品を購入していく、というようなよくあるドクターズコスメの販売形態であれば問題になることはないと思います。
もちろん、クリニックにおいて患者さんの診察などを一切しないで薬局のように化粧品を販売しているだとか、クリニックの規模に比べて化粧品販売の占めるウェイトが大きすぎるというような場合や、効果を過剰に説明して販売しているような場合には、行政から問題視されるでしょう。
(※1)平成26年8月28日厚生労働省医政局総務課事務連絡「医療機関におけるコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売について」における「当該販売が、患者のために、療養の向上を目的として行われるものである限り、以前から可能ですので、適切に取扱われますよう、お願いいたします。」。
化粧品の販売に許可が必要ですか?
一般的に「化粧品」といわれていても法律上は化粧品ではなく「医薬部外品」という扱いのものと、法律上も「化粧品」の扱いになっているものとの二種類があります。
これは薬機法(旧薬事法)という法律による分類で、含まれている成分(有効成分)などによって違い、製造等をする際には「化粧品」か「医薬部外品」かによって大きな差が出ます。
ただ、既に製造されて流通されているものを販売する場合には「化粧品」であっても「医薬部外品」であっても特に違いはなく、許可や届出は不要です。
なお、クリニック用の化粧品の中にも「化粧品」のものと「医薬部外品」のものがあり、カタログでも「医薬部外品」 は必ずその表記がされていますし、有効成分の表示もあります。
販売元等との取引基本契約の締結について
化粧品の販売にあたっては、販売元から化粧品を購入する契約をすることになります。契約書は「取引基本契約書」というような表題になっていることが多いと思います。
この契約書に書かれている条項が契約の内容になります。販売の方法や代金の決済方法、契約の期間、どういう場合に契約を解除できるのか等についてもこの契約書に書かれた通りになりますので、条項をしっかり確かめる必要があります。
また、クリニックにおけるドクターのカウンセリングを前提とした化粧品の場合には、「通信販売の禁止」「卸売り販売の禁止」「カウンセリング販売」というような条項があるのが普通です。販売元としては、クリニック専用とされている化粧品を通信販売されたりしてはブランド力が落ちてしまうためです。
通信販売や卸売り販売をすると契約違反にあたるとして損害賠償を求められることもあります。
契約書のチェックや条項の修正は法律に慣れ親しんでいないと容易ではありません。一見、表現は穏やかでもクリティカルな内容の条項が入り込んでいることもあります。
当事務所でも契約書のチェックや作成も承っておりますので、そのようなご要望がある際にはお問い合わせください。
(平成28年1月22日 文責:弁護士鈴木沙良夢)
なお、本文の内容は作成された当時における法律や規則に基づいております。その後の法改正などにより現時点では的確ではない内容となっている場合があることをご了承ください。